遙かなる時空(とき)よ,紡がれし詩(うた)よ |
2011/3/12(土)震災翌日 朝 前日夜に公演順にハンガ−ラックに掛け,用意しておいた「衣装」をガ−メントバッグにしまい、スタッフに宅配の手配を頼むと「控え室」を後にした。 ロビ−でプロデュ−サ−と「絶対リベンジをしましょう!」と堅い握手を交わし合い,そこに居たスタッフ全員に声を掛けながら、外に出てタクシ−に乗り込む。 いつもの横浜の風景の中を,いつもではない「日常」の中へと僕は静かに帰っていく。 「日常」と「非日常」が交錯する中,「時」は既に自分の中で,歩みを止めてしまっていたのかもしれない。 何だか得体の知れない「空虚感」に蝕まれながら,「心」も平常ではおられず、彷徨い始めていたのかもしれない。 その時,僕は確実に「何か」を失(なく)していたのだ・・・ 2011/10/28(金)14:50 ブ−ツ2種などを抱えながら,ホテルの部屋を出る。 「今回は平気だな」 そんな言葉を呟きながらエレベ−タ−へ。 会場に入リ,担当のスタッフが来る間、ロビ−を眺めていると、一客のフラワ−スタンドが目に飛び込んできた。 それは,ともちゃん宛のフラワ−スタンドだった。 「以前よりファンの方達から沢山問い合わせを頂いていたんですよ。どうしても川上さんにお花を出したいんだと」 スタッフの言葉を聞きながら「ともちゃんが見たら,きっと、あの大輪の笑顔で喜ぶだろうな」と思っていた。 声を掛けられ「控え室」に向う。 何もかもが変わらぬ光景。 しかし,何もかもが変わってしまった光景。 「ここでしか取り戻せないものを俺は今回取り戻しにきたんだ」 あの日と同じスタッフと挨拶を交わしながら「控え室」に入る。 一公演,場面毎に「衣装」を整理しながら思っていた。 にわかに「時」が動き出しそうな気配を漂わせはじめてきた事を。 最後のチェックを終えると,スタッフに礼を言い、明日の健闘を誓い合い、大ホ−ルを後にした。 身体の中で,微かに、止まっていた「時」が震えはじめるのを感じながら、僕は部屋へと戻っていった・・・ いつものように,僕は何度も何度も客席を見渡していた。 1階の端から端,2階、3階。 暫くすると,3階、2階、1階の端から端。 「チ−ム遙か」のみんなの挨拶の間,僕はそれを、何度も何度も繰り返していた。 その光景をまるで魂に焼き付けようとするかの如く。 「特別」な気持ちを抱いて臨んだ,今回の「特別」なステ−ジ。 時計の針は,今では、しっかりと力強く「時」を刻んでくれている。 ある意味,多くの思いの「決着」が、ここでつけられようとしていた。 そして,それぞれの、新しいステ−ジが始まろうとしている。 もうすぐ僕の番だ。 喋る事は何も決めていない。 ステ−ジには暖かい光が降り注ぎ,視線は自然と上に向く。 何と清々しい場所に立たせていただいているのだろう。 以前,ここに確かに「川上とも子」も立っていた。 みなさんからの声援を受け,涙を流しながら立っていた。 「思い」は人から人へと受け継がれ,「連綿」と語り継がれていくのだ。 自分の喋っている声が聞こえる。 「またね!」 小さい頃から、何度、その言葉に裏切られ続けてきた事だろう。 幸福なシ−ンは,幸福の度合いが強い分だけ残酷さの度合いを増して、直接心に切り込んでくる。 「2度目はないんだ」 それは分っていた筈なのに,中学・高校・大学と、心の底から思い知らされていた筈なのに。 充分,大人になった今でさえ、それでも「2度目はあるのでは?」と思っている、いつまでも「甘ちゃん」の自分がいて。 様々な光景が,一度しかなかった光景が、光の矢のように飛んでいく。 でも,だからこそ人は「日々を大切に生きなければいけないんだ」という事に気が付く事が出来るのかもしれない。 「いや,思う事、思い続ける事で、きっと願いは叶う筈だ!」 という強い気持ちを持つ事が,それを「信じる」事が出来るのかもしれない。 今回のイベントはそのようなものであった。 思い続ける事の大切さを実感したイベントであったのだ。 「再び」はある。 そう「再び」はあるんだと。 「再びここに立つ」 「大切な仲間達と,沢山のオ−ディエンス達と共に」 様々な「またね!」の欠片達を拾い集めたものが「思い出」になるのなら「再び」の強い思いを集めたものは一体何になるのか。 「パンドラの箱」から最後に飛び立ったものが「希望」だったように,未来を指し示す「指針」のようなものであってくれればと願わずにはいられない。 まだ僕は喋り続けている。 それから・・・そうだ・・・ それだけではない。 「今」という瞬間は「2度」とこないのだから,この時をしっかりと生きなければ。 これまでは,そう思い定めていたようで、本当のところは、思い定める事が出来ていなかったのかもしれない。 とても「曖昧」な捉え方しか出来ていなかったのかもしれない。 今なら,今なら、分るのだ。 「2度」とない「今」という瞬間が,どれだけ掛け替えのない大切な時間なのかという事が。 「当たり前」がどれだけ「特別」で,「日常」が,どれだけ「愛おしい」ものなのかという事が。 フォ−カスが急激に「真ん中」に絞られてきたような感覚とでも言おうか。 自分の心の「ど真ん中」に,決して揺らぐ事のない「重し」のようなものが鎮座したような感覚とでも言おうか。 だから・・・ キチンと「自分から始めなければ」と思ったのだ。 「今の仕事はテメエがしたいからやってるんだろう!」 「ならお前からどんどんアクションを起して見ろよ!」 「何時までもぬるま湯に浸かってのうのうとしてるな!」 「自分の事をまだまだだと思ってるんなら,もっと厳しく、ストイックに生きて見ろよ!」 「叫ぶ時は,心の底から、魂を揺さぶらせて叫んで見ろよ!」 「アウトサイダ−はアウトサイダ−らしく,雄々しく生きて見ろよ!」 「お前は,風に立つライオン、で在りたいんじゃなかったのか!」 自分の前を通り過ぎていった数々の命達よ。 「夢」半ばで倒れ。 「不慮の事故」に見舞われ。 「病」に冒され。 それから・・・それから・・・ 生きたい!生きたい!と強く願い。 理不尽な力に抗いながらも,力尽き連れ去られた命達よ。 なのに。 何故みんな「笑顔」なのか。 苦しかったろう,辛かったろうに。 何故。 それは・・・ 「みんな生ききったからだ」 そうだ。 「命」の尊さは,ただ単にその長さに比例するものではない。 長さだけでは決して計り得ないものなのだ。 だから,みんな「笑顔」なのだ。 まだ俺は喋っている。 「ありがとう」 その思いを繰り返しながら,俺は喋っている。 全ての事柄に対して,俺は感謝の言葉を、頭の、心の、魂の底から絞り出している。 「俺もちゃんと生ききるから」 会場には,いつまでも「おかえり〜!!」の暖かいみんなの声が、谺していた。 それに答えるように「みんな〜!これからも、チ−ム遙かをよろしくお願いします!!」 という明るい声が,全ての神子達の「笑顔」を包み込み、いつまでもいつまでも、この優しい空間に、舞っているような気がした。 僕達は,確実に「一歩」を踏み出していた。 各々が目指す「その先へ」向って・・・ 2011/11/3(木)17:43 自宅にて & 2011/11/4(金)15:09 同上 & 2011/11/9(水)14:44 「長谷の珈琲屋」にて & 2011/11/9(水)18:46 自宅にて & 2011/11/10(木)17:12 同上にてフィニッシュ |
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