あの日のテニス・ボ−イ |
雨がしとしと降っていた。 「僕はこの道を,もうどれくらい辿ってきたのだろう」 そんな事を思いながら,僕は歩を進めている。 何も変わっていないような,全てが変わってしまったような風景の中、ボ−ルを打ち合う音が耳に届きはじめる。 ここに初めて足を運んだのは,中学一年の夏。 その年の春,僕達、鶴が台中学テニス部に入部した一年生は、全員、その夏の大会に出場した。 部員が少なかったという事もあるのだが,とにかく練習をしてコ−トに立った。 中学の3年間は,毎日がテニス漬けの日々だった。 テニスしか頭にはなかった・・・ 雨の中,プレ−を続けている人達を視界の端にとらえながら、「ド−ヴィル」の扉に手をかける。 その姿勢のまま,テニスコ−トにもう一度視線をやった。 ・・・あの頃の空を思い浮かべ・・・ ・・・あのポイントを思い浮かべ・・・ 僕は静かに,次の一歩を踏み出していた。 2000/春 |
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