夏に忘れたポイント


あの年の夏。
中学生活最後の夏の大会。
ベスト8をかけた3回戦。
全4面あるテニスコ−トで,各ブロックから勝ち上がってきたら、「俺達台中が全てのコ−トに立つ事になるな」と、
皆で少し興奮気味に話していた。
僕達のペアは,一中のエ−スペアとの対戦だった。
その大会,僕等のペアは調子が良かった。
今まで勝った事のない一中のエ−スにも勝てるかもしれないと思っていた。

僕達は奮戦した。
互角の試合運びだった。
暫くラリ−が続いた後のポイントだったと思う。
相手の打ったボ−ルがサイドラインを割った。
しかし,審判の判定は、イン・・・
怒った僕の相棒の前衛のKが執拗に抗議をしたが,受け入れられず、試合再開。
僕は,何故か淡々としていた。
試合が終わって暫くたってから,静かに怒りが込み上げてきたのだが、その時は大人しく引きプレ−に戻った。
それから僕等にミスが少しずつ増え,僕のストロ−クがアウトしたところで試合は終わった。
セットカウント,3対2。

審判は,一中を率いている女の先生だった。
相棒のKや,周りで観戦していた連中は、「あいつきたねえよ」「自分のところだからってあったまくるなぁ」等と、
ひとしきり言い合っていた。
他の各コ−トでは台中のペアが順当に勝ちあがり,ベスト4へ向けた試合が開始されようとしていた。

ボ−ルの跡は,サイドラインの外側に、しっかりと刻まれていた・・・

あの時のポイントの事は,テニスコ−トを見る度思い起こされたりする。
あれがなければ僕等のペアは多分勝っていた。

たった一ポイント,されど一ポイント。

今までの僕の人生の中で,そういう事は多かったような気がする。
そして,たまっていた一ポイントを、今は少しずつ返していく作業をしているように思う。
そういうポイントがあったから,僕は今こうして生きていられるような気もする。

今度はそのポイントを,しっかりとこの手で掴む事が出来る自分で在りたいと思う・・・

2001/5/17(木) 


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