ブル−・カルテット


 「蒼穹」
季節によって空の色は様々だろうが,今日のような雲一つない高く澄んだ空を見上げていると、秋の空の色
が一番美しいのではないだろうかと、そんな事をぼんやり考えていた。
などと言って,季節事に同じ思いにとらわれているのかもしれないのだが。

既に傾きかけた陽射しが僕の左肩から当たっている。
テ−ブルの上には,先程まで読んでいた、北方謙三著「されど君は微笑む」と携帯F503is(当時)
風はそよぐほどで,陽にはまだ力がある。
「もう一杯ココアでも飲むか」
とテ−ブル上に視線をはわした時,「あっ」と思いおもむろにカバンからノ−トパソコンを取り出した。
本の向こう側に置く。
それらが光りを照り返す様を見て僕は満足していた。
携帯はギャラクシ−ブル−,ノ−トはメタリックブル−、ハ−ドカバ−はそれらと同じような蒼を基調にしていた。
斜光を浴びて,三種のブル−が美しく映えている。
ほんの些細な事かもしれないが,僕はとてつもない大発見でもしたような気分で、つかのまのその色の饗宴
を楽しんでいた。
やがて陽が山に隠れると,急速に冷え込んできた。
今度来た時も,この色の饗宴を楽しもうと僕は思い、コ−トを羽織ると一度空を見上げた。
一番星にはまだ早い時間のようだ。
「凪」の時間の中,僕はゆっくりと席を後にした・・・


2001/11/11 自宅にて


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