友への書簡


梶山,不思議なものだな人生は。
お前を乗せた列車は,遠回りをしながらも、巡り巡って再び「夢」という駅に停車したんだな。
本人さえも日々の暮らしの中で忘れかけていた場所へ。
あの時,俺には「夢」等なかったんだ。
ただ俺が逃げて来た場所があそこだっただけで,俺は本当に声優になりたかったのかというと、ハッキリいって
わからないんだ、嫌「否」だったと思う。
自分の性格上,その時その時はある意味懸命に生きていたのかもしれないんだが。
そこらへんの事は俺が今迄書いた「直筆メッセ−ジ」や「エッセイ」を読んでもらえれば、分ると思う。
しかしあの場で俺が叫んだ「絶対に声優になってやるからな!」という言葉には、気持ちには、嘘はなかったん
だと思う。

俺はあの時,あそこでしか「声優」になれなかったであろうタイミングでこの世界に放り込まれた。
そう,まさにそんな感じだったんだ。
勿論それまでの行動は全て能動的だったんだが・・・

俺にとっては仕事を始めるようになって,「これが俺の夢なんだ」と、思い定めるようになっていったのかもしれない。
勿論,厳しい現実の前では「夢」等と悠長な事を言っていられなかったというのもある。(現場というレベルで
考えた場合)
だからだと思うんだが,俺は自分が芸能人だ等と思った事はなく、「仕事」の一つと捉えているんだと思う。
しかし,今では、この仕事に俺は確かに「夢」を見ているんだ。
手が届かない「夢」ではなく,「実現」出来る「夢」として。
何が俺の夢なのかは,さっきも言ったが、俺の今迄書いたものの中に表現されているからそこから汲み取って欲しい。

梶山,俺達もまだまだこれからだ。
「夢」を信じて生きていこうぜ,「青い」「甘い」と言われようが、堂々と胸を張って!!


2003/1/28(深夜) 自宅にて


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