烏帽子岩前


 目の前に「烏帽子岩」が見える。

「ス−パ−ビュ−踊り子」の青が,しばしそれを打ち消して走り去る。
時間差で吹きつけてくる風を感じながら,僕の目はそれに向いたままだ。
最初は意識していたわけではなかった。
たまたまその場所に並んだ時に,その事に気づいたのだ。
相模線のホ−ムの前の方にそれは鎮座している。
一枚岩から削り出されたのであろう「烏帽子岩」をかたどったオブジェ。
茅ヶ崎のシンボルの一つでもある「烏帽子岩」
空気の澄んでいる冬の時期には,よく、右手に「富士山」、前方に「烏帽子岩」という見事な景色を、海岸か
ら臨む事が出来る。
僕の最近の日課は,相模線の車窓から「富士山」を眺め、東海道線の上りのホ−ムから「烏帽子岩」を眺め
るというもので、それから仕事場等に向かっている。
今では,相対して心の中で一言でも挨拶をしないと、何だか具合が悪いというのか、落着かない。
それはその事が半ば当たり前のようになってしまったからだろうか。

僕は今日も「烏帽子岩」前に立っている。
「ス−パ−ビュ−踊り子」の青を見送りながら,ふと、まだ見ぬ夏を思う。
真っ青な空の下,眩しすぎる陽射しに目を細めながら「烏帽子岩」を見つめる自分の姿を、その光景に重ね
合わせながら。

今日もまた,僕の一日が始まる・・・


2003/3/1(土)15:29 小瀧美術館内「Caffe Angeli」にて


back Copyright 1999-2006 Sigeru Nakahara. All rights reserved.