テラスの季節


 心地良い風が吹き過ぎていく。

何ヶ月振りかのテラス席は,変わらず僕を迎えてくれた。
桜の満開と日曜が重なった今日,ここ北鎌も人で賑わっている。
「Caffe Angeli」も満席で,待つという行為を僕は初めて経験していた。
そして,待つという事が嫌いな僕にとって、その体験は逆に新鮮なものだった。

「やはりテラスはいいな・・・」

PCを打つつもりでいた僕は,風を感じた瞬間、ノ−トPCを出す手を止め、変わりに本を取り出していた。
時々春のうららかさにまどろみながら,春風駘蕩を絵に描いたような主人公が活躍する小説を読み進める。
その中の彼はまだ高校生だ。
そういえば,ここの左隣の家には、立派な梅の木と、桜の木があり、どちらも見事な花を咲かせ、とても幸福
な気分にさせてくれていた。

目を閉じる。
というか,自然に瞼が下がってくるのだが。
それに逆らわず,僕は静かに耳を傾ける。
様々な音の中に,気配の中に、ここの「鼓動」を感じようと試みる。
陽に手を翳し,空を見上げる。
葉の緑が目に優しい。
柔らかい季節が,己の訪れを告げているようだ。

テラスの季節が,また、始まる・・・


2003/4/6 19:15 茅ヶ崎「ドト−ル」&自宅にて


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