偶然の再会 |
カウンタ−の左端にその背中が見えていた。 一体どの位ぶりだろう。 「先生」 と声を掛ける。 「おお,中原、ここに座れ」 振り返った先生は,あの頃より年を取ったと感じるだけで、全然変わってはいなかった・・・ 昨晩久しぶりに小田原に飲みに行こうかと思っていたのだが,台風が気になっていたので見送る事にして、 家路につこうと茅ヶ崎駅の改札に向かっていた。 その時,「中原くん」と呼び止められ、「えっ」と向いた先に、中学の同級生Tが立っていた。 なんでも先週同窓会を茅ヶ崎でやったというのだが僕は知らなかったのだ。 男女合わせて14名程集まったという。 不思議なもので名前を聞くと「あぁ,あいつか」と顔が浮かんでくるもので,暫し旧友の話しに花が咲いていた。 担任のK先生もこられていて,二次会は先生のいきつけの店で飲んだそうだ。 そしてそこに先生は時々顔を出すという話しで,Tが「駅の近くだから案内してあげるよ、先生いるかもしれな いし」と連れて行ってくれたのだ。 店に入り,先生の事を聞くと、そこのママさんが携帯で連絡をとってくれ、20数年振りに懐かしい先生の 声を聞いた。 そして先生は「俺もこれからちょうど行こうと思ってたんだ、よかったら飲もう」と誘ってくれたのだ。 Tは家に帰らなければならず,又の再会を約束して別れた。 「何という偶然なのか・・・」 これからの不思議な邂逅に,僕の胸は高鳴っていた・・・ 盃を重ねる事に時間は静かに,そして確実に埋まっていった。 先生は今法律を勉強中で,何と、大学院にいるそうなのだ。 ちなみに先生は数学の教師だった。 僕の仕事の事も聞きたがり,「ビバリ〜」の話しをすると、下の息子さんが大ファンで、いつも見てたよと 父親の顔になって喜こばれていた。 リクエストをされて,尾崎の歌も何曲か唄った。 店も感じがよく,ママさんも店の子も常連さん達も、気さくで面白い人ばかりだった。 どうやらいきつけの店が一軒増えたかもしれない。 学校の話しも色々と聞かせていただいた。 僕達が卒業した後何年か経った時,鶴が台中学校も荒れた時期があり、先生は必死に様々な事柄と 闘ったそうだ。 そして今でもその時の父兄が,同窓会を催してくれるそうなのだ。 その事実は,それだけ先生が頑張っていたという証なんだろう。 話しはいつまでも尽きそうになく,僕も珍しくその場を去りがたかったようだ。 「また飲みに来ます」 僕がタクシ−を待つ間,先生は一緒に待ってくれていた。 僕を乗せたタクシ−が走り出しても,先生は暫くそこに佇み、見送ってくれていた。 心地よい酔いに身を任せながら,僕は人と人との結びつきの不思議に思いを馳せていた・・・ 2003/8/9 16:40分 茅ヶ崎「ドト−ル」にて |
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