「ラウンドするばい!!」〜ダンド−徒然日記〜(其の十)


〜逆襲のY〜

その時が近づいていた。
Yにとって,それは大きな決断だった。
「このままではいけない,ヤラれる前にヤラなければ」
西暦2004年・8月某日,この日を境に世界は変わる・・・筈だった・・・

幼少の頃,Yは利発で活発な子だった。
そして既に「弱きを助け強きを挫く」という精神を強く心に宿していた子でもあった。
母からは常に「他人(ヒト)を決して虐めてはいけませんよ、例え自分が虐めを受けたとしても」と
言われ続けており、その教えを彼女は信じて疑う事はなかったのだ。
こんなエピソ−ドがある。
幼稚園で,ある子が虐めを受けていた。
Yは違う組であるにも関わらず「一人に大勢で何すると!」と身を挺してその子を庇ったのだ。
しかし次の日から,Yが虐めの標的にされるようになっていった。
その中にはYが助けたあの子も入っていた。
Yは,心で涙を流しながらも、決して虐めっ子達に対して弱みを見せる事はなかった。
彼女は余りにも気丈だったのだ。
「あたしは絶対,虐めっ子にはならない!」
小さな身体に大きな魂を宿した少女は,こうして大きくなっていった・・・

その歯車が狂い始めたのは,ある飲み屋であった。
彼女自身,自分がそんな風な考えに陥るとは思ってもみなかったのだ。
「枝豆攻撃」
この一見何の変哲もない言葉がトラウマになるとは。
その時彼女は,自分自身では対処出来ない程の衝撃を受けたのだ。
今迄,小・中・高と様々な虐めを体験してきた自分にとって、これは虐めとも呼べないような児戯に
等しい行為であった筈なのに。
それが・・・
まさに「事実は小説より奇なり」であった。
Yは呆然と,最近自分が一番気に入っている「白葡萄ジュ−ス」に入っている「枝豆」を見つめていた。
隣には,喜ぶIの姿が。
その時の心の動きを彼女は上手く説明出来ないのだが,メラメラと燃えあがる復讐心を抑える事が
出来なかったのは事実だ。
思わずKにメ−ルを打ったのだが,そんな自分も彼女は許せなかったのだ。
「これは私の問題だ」
そして生まれて初めて彼女は「虐めっ子」の側(がわ)に立つという,人生最大の決断を下したの
だった。
「思い立ったが吉日」とは良く言ったもので,次の飲み会でと彼女は決めていたようだ。
しかし,先手必勝と満を持していた彼女を襲ったのは、非常な現実であった。
今度は「蕎麦」が入れられていたのだ。
愕然とする彼女に,今回は参加出来ていたKが加勢する。
「弘平,また姉ちゃんにそげな事して!」
その後,Yは一矢を報いるのだが、誰の目から見ても彼女の敗北は明らかであった。
Iに,一日の長があったという事であろうか。
口を引き結び悔しさを全身から漂わせているY。
だが,勝負はまだ始まったばかりなのだ。
本当の闘いはこれからなのだ。

果敢に逆襲に転じたY。
勇気あるその一歩を重ねる内,見えてくるものが必ずあるだろう。

頑張れY!君に涙は似合わない!!


2004/8/16(月)0:15  自宅にて

PS:「ダンド−」とは,この時僕がレギュラ−出演していた、ゴルフアニメ
「DANDOH!!」の事で、この「ラウンドするばい!!」は、そのAR現場やそ
の他諸々の事を赤裸々(笑)に語った、フィクションとノンフィクションが入り混
じった、掲示板に不定期連載されていたものなんです・・・


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