オ−ダ−メイド


先日,アルミ&レザ‐で造られたブ‐ツ・バッグ(フルオ‐ダ‐・特注品)に少々改良を施してもらおうと工場
を訪れた際、或るレザ‐小物も三種別途注文していたのだが、それらが出来上がったとの連絡を受け,僕は
いそいそと現地に赴いた。
ブ‐ツ・バッグの改良型も満足のいくものだったのだが,三種の小物も中々のものであった。
その中で,ワンポイントだけ変えていただいたのが、イタリア製の「折り畳み傘」
僕はマジックテ‐プが大嫌いで(レザ‐関係・鞄&靴&服&小物類は特に)だから普通であればそれが
分った段階で、購入するには至らないのだが、その「折り畳み傘」の場合には一目ぼれで「そうか、ここの
部分を直してもらえばいいんだ」と当たり前のように考える自分がいたのだ。
その傘は,多くの傘がそうであるように、巻いて止める部分がマジックテ‐プになっていた。
そこが今はボタンになり,全てレザ‐となっている。
何故,レザ‐なのかと言うと、この傘には、ショルダ‐タイプの収納ケ‐スが付属しているのだが、これが
何と、総レザ‐なのだ。
この発想は多分日本人にはない。
濡れた傘をレザ‐に容れるなど。
そのレザ‐ケ‐スが,無骨な感じでカッコ良く、晴れた日でも肩に掛けて持ち歩きたいと思わせる一品
なのだ。
勿論,本体である「傘」自体にも惚れた。
持ち手は木で,そこに同じく木の丸いボタンが付いていて、二段階で開くシステムになっているのだが、
フレ‐ムが変則的で美しいのだ。
「折り畳む」という事の理に叶ったデザインと造りになっているのだ。
裏地にさりげなく描(えが)かれた模様(絵)も美しい。
そして持ち手の背には,レザ‐に刻印されたブランド・ネ‐ムが。

レザ‐は特別な物ではなく,日常に当たり前に在る物

「レザ‐はそんなにヤワじゃないよ」
そんな言葉が聞こえてきそうな気がした。
そういえば,靴の手入れの仕方で「まず水拭きをするとツヤが増す」というやり方を読んだ事があった。
それもタップリと水分を含ませて。
まだ試してはいないのだが「やってみよう」という気に段々なってきているのは事実だ。
最近スタバで珈琲を飲んでいる時,謝ってミルクを零してしまい、それがレザ‐ブ‐ツに付着してしまった
事があったのだが、ウエットティッシュで拭ったところ、確かに艶が増したというか、そんな印象はあった。
勿論,その後のケアをしっかりとするという事を踏まえての事になるのだが。

工場を後にしようと席を立つと,にわかに雨が降り出してきた。
局地的に時々雨が降ると言っていた天気予報は当たっていたようだ。
「ちょうどいいですね」
と僕は言い,傘を差す。
初めてそれを目にする工場の職人さんが「このフレ‐ム使い,何ともいえませんね、いいですねぇ」と覗き
込み「あっ,裏地に描かれた絵も雰囲気ありますねぇ」としきりに頷いていた。
ブ‐ツ・バッグは宅急便で送ってもらう事になっていて,僕の右手には、レザ‐小物・二種が下げられていた。
「じゃあまた来ます!」

晴れやかな笑顔を覗かせ,雨の中へ歩き出す。
僕は雨音を聞きながら,新たなオ‐ダ‐品の構想が、静かに頭をもたげるのを感じていた・・・



2005/4/29(金)14:05 小瀧美術館内「Caffe Angeli」にて


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