往く雲の如く 【レザ‐を巡るエッセイ&スト‐リ‐】


〜鎌倉デビュ−〜

試し着をする事は多い。
そして「どこでデビュ−させるか」を考えるのが好きなようだ。
今回,鎌倉でデビュ−させようと思った服が二着と,靴が一足あった。
「0467」でと。(鎌倉にある僕一番のお気に入りの、カフェ・ダイニングバ−)
最初からそうしようと決めていた訳ではなく,だいたいが、その時の気分とフィ−リングに左右されるのだが。
一品(ひとしな)目は,盛夏に某オ−クションでゲットした、レザ−ブランド「ル・コンド」の2000年発表のレザ−
シャツ「パブロ」。
これは,あの著名な芸術家である「パブロ・ピカソ」がアトリエで好んで着ていたという「バスクシャツ」をオ−ル
レザ−で復刻させたものなのだ。
ただ,このブランドはセ−ルというものを殆ど行わず、尚且つ同じものは数点しか制作されないので、この「パブロ」も
発表と同時に完売していた、今となっては「幻」の逸品なのである。
ただ「ル・コンド」のHPの「コンドマニア」というペ−ジで紹介されているのを見て(現在も),ずっと心の片隅に
引っ掛かってはいたのだ。
真っ先に問い合わせも行っていたのだが,再び制作する予定はないという答えだった。
だから,それをウェブ上で偶然見つけた時は,目を疑うと同時に「ヨッシャ−!!」と心でガッツポ−ズをしたものだ。
そして二品目(ふたしなめ)は,今季無理をして手に入れた、フランスは「CHAPAL(シャパ−ル)」のレザ−ブルゾン。
このブランドの事は全く知らなかったのだが,たまたま、先に触れた「ル・コンド」の秋・冬の新作を見に、ある
ショップを訪ねた折、真っ先に目に飛び込んできたのだ。
そのカラフルな色使い(部位によって様々な色合いのレザ−が使われている)は,決してハデな印象を与えず、
しかし確かな存在感を伴って、僕に語りかけてきていた。
一通り「ル・コンド」の新作を試着した後(のち),それに袖を通した。
何と柔らかな着心地なのか。
ボリュ−ム感は見た目でもあるのだが,レザ−自体も自由に伸縮を繰り返すようで,自身、それは初めて体感する
ものだったのだ。
色味はもう一種類,いい感じの「青」があったのだが(「ル・コンド」で既に藍染のレザ−ジャケットを求めていた)、
最後は自分の心の声に素直に従う事にした。
今の年齢で,このような明るい色を纏うのはどうかと思っていたのだが、ショップスタッフと話している内「若い人間
には逆に似合わないかもしれないな」と思うようになっていった。
年齢(とし)を経た現在(いま)だからこそ着こなす事が出来る「逸品」なのではないのかと。
僕にとっては,初のレザ−ブルゾンとなった。
付け加えておくが,ここはフライトジャケット作りで名を馳せた老舗で、現在はバイカ−物で評価が高いブランドのようだ。
最後,三品目(みしなめ)は、梅雨の時期の受注会で先行発注していた、これもイタリアは「プレミア−タウォモ」の
ブラウン系のサイドジップブ−ツ。
色味のグラデ−ション,レザ−使いが何ともいえず,光の加減によって、様々な表情を見せてくれる逸品だ。
家のシュ−ズボックスには,プレミア−タが、これをいれて四足鎮座している。
他の三足の内訳は,ブラックが二種とホワイト(ややクリ−ムがかっている)が一種。
ホワイトは片方のブラックと同じデザインで,ブ−ツの中では「プレミア−タ・ウォモ」が今は一番のお気に入りのようだ。
本当の事を言えば,レザ−ブルゾンとブ−ツは既にプチデビュ−を果たしていたのだが、その時は本当に「ただ着てみました」
という状態だったので、今回が正式なデビュ−と考えていたのだ・・・

店の女性スタッフが,先日仲垣くん(知り合いの若きレザ−・ア−ティスト)が精魂込めて作ってくれたバッグに驚嘆の声を上げ、
そこに別のスタッフが加わると、僕が携帯していた幾つかのレザ−小物も交え、話は弾んでいった。
「僕もレザ−,好きなんですよ」
オ−ダ−について僕が熱く語り始めると「〜という感じのが欲しいんですよ」「あたしも〜な感じのレザ−バッグが欲しくて」
そんな二人に中垣くんのファクトリ−の話をしながら僕は思っていた。
「こういうのも悪くないな」と。
実は先日,ある現場の後の飲みに行った席で、女性スタッフ二人とレザ−の話で大いに盛り上がり「是非お願いします」
と言う二人を案内して、彼のファクトリ−を訪ねていたのだ。
そこで彼女等は各々二点づつオ−ダ−を掛けてくれた。
かくいう僕も便乗して一点追加オ−ダ−を掛けたのだが。

レザ−が人と人とを結びつける架け橋となってくれている事に感謝しながら,僕は今日も、レザ−の香りに、そのものに
抱かれながら、思いを馳せる。

「次は何を・・・」と。



2005/11/17(木)14:58 鎌倉「0467」(ゼロヨンロクナナ)
             &
2005/11/18(金)15:30 茅ヶ崎市美術館内・喫茶室「Pino」にて


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