空が高い場所



僕にとって,通勤電車でもある東海道線の車窓に広がる風景は、他のどんな景色よりもお気に入りのようだ。
毎日のように目にしている筈なのに飽きる事がないのだ。
その中でも自分の好きなポイントというのが何箇所かあるのだが,一箇所だけ「空間」に魅かれている場所がある。
そこは,空が広く、高く感じられるのだ。
勿論,見た目で、もっと広く、高い所は他にいくらだってある。
眺望が素晴らしい所も。
何故そう思うようになったのか定かではないのだが,気付くと「高いなぁ」と呟く自分がいたのだ。
(何気ない「物」や「様」の方に心を寄せる事は確かに多いようなのだが)
沖縄や北海道の,それこそ息を飲むような、心が一瞬で奪われるような風景にも幾度となく遭遇してきてはいるのだが、
そういったものとは「質」が違うと言ったらいいのだろうか,何か「根本」が違うような気がするのだ。

明るい内は,本も開かず、車窓に流れる風景を静かに見つめている。
時には,思いの海に浸りながら。
時には,季節の移ろいをただ愛でながら。

「そうだな・・・」

と,そこまで考えて僕は思う。
自分が居る場所こそ「空の高い場所」でなくてはいけないのだと。

見上げる空は,既に冬の顔をしていた・・・



2006/12/13(水)17:00 茅ヶ崎「スタ−バックス」にて


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