夜が奔る






駅からの帰路に,その花は咲いていた。
路傍にひっそりと佇み,月の雫を浴びながら、咲いていた。
夜遅く帰った時など,その黄色が自ら発光しているかの如く見え、不思議な心持に包まれるのだ。
ただ,この花には昼間はお目に掛かる事は出来ない。
昼夜が逆転しているようなのだ。
花は好きで,今は、この「名も知らぬ花」を楽しみにしている。
一瞬の邂逅は,一日の疲れを確実に癒してくれるようだ。
いつだったか,その花が咲いている一帯が綺麗に刈り取られていてショックを受けていたのだが、暫くすると、
ポツポツと、本当にポツポツと咲き始めてきたのだ。
そして今ではもう,以前と変わらない姿を見せてくれている。
「雑草」なのかもしれないが,僕にとっては今一番可憐で、たおやかな花なのだ。
そういった路傍の花や草の方が,どうやら気になってしまう性質(たち)のようだ。

先日,偶然その花の名前を知った。
「月見草」
あ〜,あれがその花か。
名前を知って合点(がてん)した。
というか,今迄知らなかった自分に少し呆れてしまった。

「最近目にしないなぁ」「夏の花なのだろうか」とふと考えた時「知らない事が多すぎる」と一人ごちた。
踏み切りの前で,通り過ぎる相模線を見送りながら「夜が奔(はし)って行くようだ」と思った。

その脇で黄色が揺れる様は,とても綺麗だった・・・



2007/7/25(水)17:30 茅ヶ崎「スタ−バックス」にて
            &
2007/12/27(木)16:55


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