〜レッドインパクト〜





赤い鞄が欲しかった。
いつもそうなのだが,一度思うと、それを絶対完遂させなくてはと思ってしまうようだ。
半ば「使命的」とさえ言えるのかもしれないのだが。
色々探しあぐねた末に導き出された結論は、二代目の「バック・カバ−・バック」をオ−ダ−しようというものだった。
一代目は「エアロコンセプト」の「スリムポ−タ−」というアタッシュケ−スに施して貰った。
今回はそこの「ス−パ−トランスポ−タ−」というアタッシュケ−スに。
今これを地元の「スタバ」で打っているのだが,テ−ブルを挟んだ向かいの椅子には、こちらに正面を向けた「彼」が鎮座している。
圧巻の表情。
堂々たる佇まい。
高い完成度。
これからはこいつの出番が多くなる筈だ。
今迄数多くの「作品」を「アメノスパジオ」主催の仲垣くんに創ってもらってきたのだが,これは今迄のとは僕の
受け止め方が、心の動きが違っていた。
「ついにここまできたか」と。
毎回そうなのだが,最初に打ち合わせで決めていた「形」から二転三転した末に、仲垣くんの「こだわり」が
絶妙にブレンドされた「逸品」が生み出されてくる。
ファ−ストインパクトはいつも新鮮で,喜びが溢れ出してくるのだ。
それが・・・
とても静かなのだ。
例えば「晴れた深夜、月光を受けて蒼の中に佇んでいる感じ」といったような。
ある種の「満足感」に包まれていたのだ。
この「バック・カバ−・バック」は,本人も言っていたのだが、仲垣という職人史上、現段階で「最高の逸品」
と言えるだろう。
多分「エアロコンセプト」を知っている人間が見れば,そこの「オプション」かと思われる筈だ。
もしかしたら僕は逆に,あまりの完成度の高さに拍子抜けしてしまったのかもしれない。
「甘さ」という「隙間」がなくなってきてしまった事に対して。
そんな自分を見ていてつくづく思う。
「人間はどこまでも貪欲で我侭な動物だな」と。
それは自分がそうなだけかもしれないのだが。

そして,一つの「芸術品」と言っても過言ではない「作品」に,僕はまだ「圧倒」されているのかもしれない。
「圧倒」されながらも僕はこいつのハンドルをグッと握り締め、キッと前を見詰め、一歩を踏み出すのだ。
今は「ある覚悟」がなければ持てない「こいつ」を,自分の一部とする為に。
一つの頂点を極めたと感じる「こいつ」と一緒に,僕は次へとステップアップするのだ。

「こいつ」を持つに相応しい人間となる為に。
「こいつ」を持つに相応しい人間だと思って貰える為に。

まだまだ僕の「オ−ダ−」の旅は続く・・・


2008/10/12(日)16:35 茅ヶ崎「スタ−バックス」にて


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