江ノ電アフタヌ−ン

「そうだ,江ノ電に乗ろう」

小春日和のその日。
思い立った僕は,藤沢からのル−トで「OKASHI0467」を目指す事にした。
グリ−ンのグラデ−ションが美しい,大きめのレザ−ト−トに、チェックする台本などを詰め、大股で歩き出す。
秋の気配が色濃くなっていく中,陽射しは暑いくらいだ。
相模線の車窓から見える,何時の間にか雪化粧を施した富士が美しい。
東海道線から江ノ電に乗り換える途中,急いでパスタをかきこむ。
一人の時,僕は食事に時間を掛けるのが嫌で、簡単に済ませてしまう事が多い。
要は,お腹が膨れればいいのだ。
先頭車両に乗る。
ポケットには「のりおりくん」(一日乗車券)
「こいつも久しぶりだな」
少し気分を高揚させた僕を乗せた江ノ電は,やがてゆるやかに走り出した・・・

クロムハ−ツの4色ボ−ルペンを置く。
もうすっかり冷めてしまったミルクティ−を一口。
「1時間半かぁ」
思ったよりも時間が掛かってしまった。
途端,眠気が襲ってきた。
気持ちの良い「まどろみ」の時間が訪れ,僕は暫し、それに身を委ねる。
車の音がやけにハッキリと耳に届く。
「鎌高前から見る海はやっぱり綺麗だったなぁ」
そんな事を思い返しながら,風が戸を叩く音に耳を澄ます。
すっかりオレンジ色に染められた外は,少し寒さを増している頃だろう。
「今度は,のりおりくんを有効に使わなきゃな」
結局今回は寄り道をしないで来てしまったので「のりおりくん」は存分にその力を発揮する事が出来なかったのだ。
「江ノ島もまた次の機会か」
僕は緩やかな時の流れの中にいた。
じっとしていると,とても静かで穏やかな時が流れていく。
無音の筈なのに「音」が聞こえてくるようだ。
身体に,心に、直接響いてくる。
「無音という音」
どこかでトンビが鳴いた。
相変わらず2Fには僕一人だった。
急に夕陽の中を歩いてみたくなり,帰り支度を始める。

「昼下がりの小旅行も悪くないな」

そんな事をゴチながら伝票を手にした僕は,ちょっと急な階段に足を掛けていた・・・



2009/11/12日(木)16:01 茅ヶ崎「スタバ」にて
            &
2009/11/24日(火)15:52 同上


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