青春の夏

階段を上り,スタジオの扉を開けて外へ出ると、少し涼しくなっていた。
「この位だったら過ごしやすいね」とか「今晩は寝やすそうですね」と,駅への道すがらマネ−ジャ−と言葉を交わしながら
「今年の夏は何か懐かしい感じがするな」と思っていた。
そう,今年の夏は、僕が小さかった頃の夏と、小・中・高を過ごした夏と、とても似ているのだ。
正統派の夏が帰ってきたと言ったらしっくりくるだろうか。
あの頃は,夏休みに入る10日程前には既に真夏の陽射しが照りつけ「夏休み」という魔法のような時間への期待感を
加速させていたものだった。
特に7月は輝きに満ちていたように思う。
8月の方が一ヶ月もあり長く「夏休みもこれからだ」と思った筈なのだが,何故か7月が終わると少し寂しい気分に
襲われていた。
小学生の頃は,本当に毎日がキラキラと輝いていたと思う。
夏休みは永遠に続くものだと,終わる事など考えてもいなかった。
中学生の頃は,夏の大会(軟式テニス部)が終わると、ようやく待望の夏休みが始まり嬉しかった筈なのだが、テニスの事が
頭から離れなかったような気がする。
高校生の頃は,8月の10日前後に「新聞部」のキャンプがあり、その時間が過ぎると「夏休み」が終わってしまったかのような
錯覚に陥ったものだ。
「夏休み」
この言葉を思い浮かべるだけで,今でも何かワクワクしてしまう。
いい大人になった今でも,僕の中では、7月・8月は「夏休み」なのだ。
年を経た今の方が「夏休み」と捉える期間は長く,夏が来たと思える時点から、自分の中の「夏休み」が時を刻み始めるようだ。

また夏が来た。

「今年の夏は何をしよう」
小さい頃の僕が,夏空とともに姿を現す。
蚊取り線香・蝉の声・入道雲・かき氷・スイカ・花火・海・山・エトセトラ,エトセトラ・・・・・

夏の陽射しを身体一杯に浴びながら,深呼吸を繰り返す。
僕の瞳に写る碧と白のコントラストが絶妙で,全てがクッキリとした風景の中、僕の意識もクリア−になっていく。

「青春の夏」は,まだまだ始まったばかりなのだ・・・


2010/7/17(土)15:01 茅ヶ崎「スタ−バックス」にて


back Copyright 1999-2010 Sigeru Nakahara. All rights reserved.