ロ−ドショ−

「25年振りか・・・」

自分が出演している劇場版アニメ作品を,大スクリ−ンで見たのは本当に久しぶりだった。
25年前に劇場で見た作品は「アリオン」
(この後も勿論自分が出演した劇場版はあったのだが)
あの時は確か,当時日本で一番大きいスクリ−ン(日劇)でのアニメ作品の上映という事で、話題になったものだ。
珍しく降った春の雪の中,両親と、その時大変お世話になっていたSさんを招待し、指定席での観覧となった。
両親は事の外喜んでくれたものだ。
その後近くのステ−キハウス(スエヒロだったかもしれない)でランチを摂り,おやじはいつもより早いぺ−スでビ−ルを飲み上機嫌だった。
その時Sさんを「また家にいらっしゃい!」と盛んに誘っていた。
「ほら,Sさんに迷惑でしょ」とおふくろ。
「いや,ありがとうございます。またその内寄らせていただきます」とSさん。
「本当に良かったぞ!シゲルちゃん!」というSさんの言葉に「ありがとうございます」と返す僕。
あの時の光景は,心をとても暖かくしてくれるシ−ンとして、僕の心のスクリ−ンに色褪せる事なく刻み付けられている。
そう言えば,その前におやじと映画を見たのは何時だったろう。
2人で始めて観た映画は「ロストワ−ルド」
銀座の映画館で,ユル・ブリンナ−主演のSF映画だった。
この頃僕は確か小学生。
その後は・・・
そうそう「八甲田山」を見たのは茅ヶ崎の映画館だったような気がする。
あれも小学生。
富山に住んでいた時には,おふくろが、ディズニ−映画「ラヴ・バック」(実写)に連れて行ってくれた。
あの時は小学3年生。
富山にいた期間は8ヶ月と短く,20数年振りの大雪の年だったという事もあって、良く憶えているのだ。

だから「アリオン」は,3人で初めて行った、最初で最後の映画だったのだ・・・

今「戦国BASARA」のエンディングテロップを見つめながら,ふと憶い出していた。
「アリオンの時,僕はどんな気持ちで、このエンドテロップを見ていたのだろう」
今のように「劇場版」が当たり前のように多く創られていなかった時代。
狭きオ−ディションという門を潜り抜け勝ち取った「大役」
「劇場版超大作」という看板の元「主役」を任された「誇り」と「プレッシャ−」
キャスト決定から本番まで7ヶ月余りという「アリオン」ヘの長い道程の果てに・・・
(詳しくは,著「ウインドファ−ムの丘で」内「君と歩いた日々」を参照いただけると幸いです)

「間に合ったんだろうか」

そう,僕はそんな風にテロップを見ながら思っていたのだ。
それから。
「燃え尽きた」
そんな感じだった。
その後暫くの間は本当に「抜け殻」のようだったと記憶している。

「劇場版」と聞くと,今でも何か特別な感情が沸いてくる。
それを鮮やかに蘇らせてくれた「BASARA」に感謝。

「これは何回も観たくなるかもな」

エンドロ−ルが終わり,明るくなると「よし!」と心の中で呟き、僕は勢い良く席を立った・・・



2011/6/20(月)22:01 自宅にて


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