「晩秋」〜汐風が足らない〜

11月の声を聞こうかという頃から,少し体調を崩し気味で、ようやく戻り始めてきたかなと思っていた矢先。
「汐風がたらない」
と唐突に思った。
思えば10月の始め以来「ブロンプトン」には乗っていなかったので,溜まっていた気持ちが、そういう言葉になって現れたのかも知れない。
人とは不思議なもので「もう少し様子を見よう」と思っていた筈が「明日行こう!」と,いそいそとタイヤに空気を容れ始める始末だ。
久しぶりの愛車との対面に心が浮き立つ。
今迄の自分なら,完全に治ってからでなければ絶対に出掛けなかったであろう。
ましてや「晩秋」である。
しかし思ってしまったのだ。
「汐風」の中で,何度も何度も深呼吸をすれば、傷んでいる喉を含めた「身体」も「心」も、逆に強さを発揮してくれるのではないのかと。
喜んでくれるのではないのかと。
自分に足りないのは「真の強さ」だ。
では「真の強さ」とは何なのか。
そんな考えも頭の隅をよぎっていた。
「逆療法」もあって然るべきなのだ。
ただ「シンプル」に言える事は,五感の全てが、海を求めているという事。
「汐風」を希求しているという事だ。
そしてもう一つ。
彼の地の「ブレンド」が無性に飲みたくなったのだ。
それも「江ノ電」で行くのではなく「ブロンプトン」で行って。
これからは,空気もどんどん透明感を際立たせていく。
「夏」とは違った「クッキリ感」を,もう何度も奔った風景は見せてくれるだろう。
あの景色の中に入りたくて,自分はこれからもペダルを漕ぎ続けるのだろう。
「湘南」の地で生きられる事を感謝しながら。
ここが自分のパワ−の源であると,今ではハッキリと言い切る事が出来る。
ここが「マイホ−ムタウン」であるから,都会の雑踏の中でも、自分を見失う事なく、揺らぐ事なく、真っ直ぐ歩けるのだと。

「また来たよ〜!」
と心持ち遠慮した声で叫びながら,いつもの「サイクリングロ−ド」を僕は奔り始める。

目前に,今年最後の一ヶ月が迫っていた・・・



2011/11/22(火)0:27 自宅にて
       &
2011/11/22(火)12:55 同上


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