120%から・・・

細長い楕円の光の「輪」が見えている。
その「輪」は,僕の歩くすぐ先の床を照らしながら、僕の歩く速度で、ゆっくりと移動していく。
暫くすると,その「輪」は消え、今度は前方左横から再び照らされ始める。
影となったスタッフ達が終始導いてくれているのだ。
僕はその「輪」を追うように,一歩一歩確かめながら歩を進めて行く。
一歩,また一歩。
考えてみれば「人生」は「一歩」の繰り返しだなぁ,等と思っていた。
客席が少しだけ見える。
あの幸福な時間が流れるステ−ジに立てるのも,これで最後だ。
二度と再び「同じ」時間は流れないのだ。
「行ってらっしゃい!」
スタッフから声が掛かる。
僕等は,あの暖かな光の中に踏み出して行った。
あの「幸福」な空間へと、踏み出して行った・・・

不思議に思われるかもしれないが,この間の「バサラ祭り2012〜夏の陣〜」のイベントで、僕が一番印象に残っているのは、ステ−ジ上から見た多くのファンの方たちで埋め尽くされた客席でも、素晴らしい一体感で包まれたステ−ジや会場、奔り抜けたという、ある種の「達成感」「心地よさ」でもなく、裏の暗い動線を移動していた時の光景だ。
必ず行く先を照らし出してくれていた,少しボンヤリとしていた「灯り」の情景だ。
あの時の,動線を歩んでいる時の光景は、今も時々、ふとした拍子に、僕の目の前に揺曳するのだ。
イベントが大きくなればなるほど,当たり前だが、そこに携わる人の数も、どんどん増えていく。
そう。
表に出ない裏方のスタッフの数の方が圧倒的に多いのだ。
そして,そんな名もないスタッフの方々の力によってイベントは支えられている。
それにより,僕等キャストは何の心配もなく、ステ−ジの事だけを考える事が出来、集中出来る。
それならば・・・
それならば,僕等が最後の「仕上げ」の段階だとするならば、毎回「燃え尽きて」当たり前だろう。
常に「フルスロットル」で在るべきなのだ。
「120%」で在るべきなのだ。
「100%」ではなく。
これは最近ステ−ジを踏まさせていただきながら強く自分が思っている事なのだが。
俺の考えがこうなのだ。
だから・・・
「120%から・・・」行くべきなのだ。
若い頃,21歳の時、ある先輩にたしなめられ、気づかせていただいた事。
「プロは助走なしで飛べなければいけないんだ」という事。
一歩目からフルスロットル!
それを,四の五の言わずやるという事が肝心なのだ・・・

舞台版を演じる若手の役者達にも感謝をしたい。
「フラッグクイズ」の際,無謀にも2階を目指し、あたふたとして時間が掛かっていた僕の事を待ち、アドリブでファンの方達を飽きさせる事なく、僕を先にゴ−ルさせてくれた。
走る前には「中原さん,アキレス腱だけでも伸ばしておいた方がいいですよ」と舞台上でアドバイスをくれたり。
彼等の「心遣い」は「人を思いやる暖かさ」は本当に心に染みた。
殆どの子達が初対面だったのにも関わらず,皆、心良く接してくれた。
彼等のリハを当日見ながら,その迫力に圧倒され「気合」を入れ直していた自分。
声優陣や西川さんをはじめ,本当に「いいチ−ム」で仕事が出来た事を誇りに思う。
僕をあの舞台に立たせてくれた,小林プロデュ−サ−にも感謝したい。
もう一度言わせていただくが,全てのスタッフ、関係者、出演陣一人一人に「ありがとう!」と言いたい。
そして僕等と一緒に素晴らしい舞台を創り上げてくれた,ファンの方達一人一人に対しても。

俺はこれからも精一杯,奔り続けます!

いつでも・・・そして・・・いつまでも!!




2012/8/13(月)17:00 自宅にて
      &
2012/8/21(火)13:58 自宅にて


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