海へ・・・

いつものようにサイクリングロ−ドに出ると,これもいつものように3度深呼吸をし、茅ヶ崎の海や「烏帽子岩」に挨拶を交わしてから「江ノ島」へ向けペダルを漕ぎ出した。
季節はすっかり「夏」へと移り変わっている。
いつものコ−スを走り始めながら思っていた。
自分が「海」へ通うようになったのは,確か20代真ん中過ぎからと遅かったのだ。
最初は駅から浜まで歩きで来て,一番近場辺りで日光浴をしていた。
それから暫らくすると,多くの茅ケ崎市民が当時していたように「ダイクマ」でママチャリを購入し、海まで来るようになった。
そして足を伸ばす内に「江ノ島」まで行くようになったのだ。
途中にお気に入りの場所を見つけ,そこで必ず一時間強「日光浴」をしてから「江ノ島」へ向かい、下にチャリンコを停め「江ノ島」をズンズン登り「遊覧亭」という食堂で「チャ−シュ−メン」を食べ、そこから暫らく歩いた場所にある「あぶら屋」でアイスティ−orアイスコ−ヒ−を飲みながら読書をして帰る。
そんな判で押したような生活を,夏になると送っていた。
「江ノ島」詣でが始まる前は,その手前にある「ファミレス」や、気になった店に入りランチを食べ、少々の休憩を摂った後、茅ヶ崎へと引き返していた。
何故「江ノ島」へ行きだしたのかは定かではないが,夏の間だけチャリンコに乗るという行為は、いつのまにか定着していたようだ。
サビサビになってしまったママチャリを地元の自転車屋で綺麗にして貰った事もある。
自然,夏には真っ黒に陽灼けしていた。
そんな夏の過ごし方に変化が現われてきたのは何時の頃だっただろう。
あれはある夏のイベントの控え室での事だった。
メイクさんから「中原さんは肌が白いんですからもう無理に焼かない方がいいですよ」と言われたのだ。
その事が頭に引っ掛かっていたのか,その夏から浜で寝転がる事をしなくなっていった。
何年か続いていた「サマ−ツ−リング」は幕を閉じ,暫らくチャリンコに乗らない「夏」が続き、あの「暑い夏」は遠い記憶の彼方に霞んでいきかけていた。
しかし。
ふとしたきっかけから「ブロンプトン」と出会う事となり,今現在の第二期自分的「サマ−ツ−リング」が幕を開けた。
今ではそれは「オ−ルシ−ズン・ツ−リング」へと形を変え「進化」しているのだが・・・

第一チェックポイント到着。
ダイバ−ズウォッチで時間を確かめ,水分補給をする。
ここからは,寝転んでいるあの頃の自分が見えるようだ。
汗を拭くと「ボルヴィックシャワ−」が懐かしく憶い出された。
ここではいつも水滴を滴らせながらペダルを漕ぎ出したものだ。
「江ノ島」に向かって。
「GO!」
小さく呟く僕の目に「江ノ島」がクッキリと揺れていた。
ここからの風景も最高だ。
いや,サイクリングロ−ド沿いはどこからでも絵になる。

赤蜻蛉達と並走しながら自然に笑みが溢れるのを感じていた。
キラキラした海に時々視線をやりながら走り続ける。

「この夏は何度でも奔ってやる!」

海へ。

暑い夏は・・・そう「暑い夏」はまだ始まったばかりなのだ・・・



2013/8/4(日)23:29 自宅にて


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